物流・在庫管理の川上から川下まで

自分の業務経験を通して、物流・在庫管理について学んだことや物流関連のニュースなどで気づいたことを記していくブログです

【コラム】2024年問題に向けてできること

■期限まで1年を切っている2024年問題

最近ではニュースや経済番組でも「2024年問題」という言葉がよく聞かれるようになり、物流や運輸業界の人でなくてもこの言葉を知っている人も多くなってきた。
働き方改革関連法によって2024年度から自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が年960時間に制限されることになるが、それによって発生する様々な問題の総称が2024年度問題と呼ばれている。もともと長時間労働を暗黙の了解として認めてきた運輸業界にこの規制が適用されることで、荷主からすれば物流費が高騰したり、そもそも委託できる業務量や業務先が減少あるいはなくなってしまうなど、大きな影響が出ることが予測されていて、荷主企業・物流企業の双方が対応に苦慮している。

2024年度問題の中身については多くのサイトで様々な情報が発信されていて、その問題の深刻さがうかがえる。私が勤めている企業も様々な点で物流との関りがあり、少なからず影響が出ることが予想されているため、関係部門ではその対策を急いでいる状況である。ただ、2024年度問題で一気に表面化してきたものの、そもそも物流業界にはこのままやっていたらいずれ行き詰まるという課題認識は当事者の間ではだいぶ前からあったように感じている。

AIの活用や様々な技術革新によって、直面する課題を解決していくことはもちろん重要だが、そのような大規模でお金も時間もかかる対策は大企業でないとなかなか具体的に踏み切れないというのも現実であろう。そんな中で、私が「これは素晴らしい取り組みだ!」と感じた事例があったので、一つ紹介したい。

■「コネクトエリア浜松」の取り組み

東京と大阪のほぼ中間に位置する新東名高速浜松SAに隣接する場所に、「コネクトエリア浜松」という施設がある。NEXCO中日本遠州トラックが共同で管理・運営する施設だが、この施設では東京と大阪から来たトラックどうしが、お互いの積み荷を交換することができる。どういう仕組みかは下のリンクから見てもらいたいが、現在の物流業界の課題に大きな改革をもたらす素晴らしい取り組みだと感じる。

コネクトエリア浜松 (ca-hamamatsu.com)

 

■大がかりな技術革新以外にもできること

サイトを見てもらってお分かりの通り、この仕組みはさほど複雑なものではなく、説明すれば子供でもすぐ理解できるような単純な仕組みである。ところがこの仕組みを利用することで、東京-大阪間の物流を多く抱えている企業にとって、ドライバーの負担や諸経費の削減の効果たるや絶大ものだと想像される。
東京ー大阪間の輸送を一人のドライバーで対応しようとすると、片道で5~6時間、往復では確実に12時間を超える拘束時間となり、それだけで労基法に基づく1日の労働時間を確実に超えることになるが、もし東京を出発したトラックが浜松のコネクトエリアで荷物を積み替えて東京に戻ることができれば、早ければ東京ー大阪間の片道分の時間ぐらいでその日の業務を片づけることができることになり、そのうえで自宅でしっかりと休むことも可能になる。

AIを活用した物流の再編や自動運転技術の進化などは、いずれ物流業界にも大きなプラスの変化をもたらしてくれるのは間違いない。ただし、単独の企業で実現できるようなものではなく、大幅な技術革新や社会インフラの整備なども求められるものであり、実現にはそれなりの時間とコストがかかる。少なくとももう1年を切った2024年度問題の発生までに劇的な貢献を期待するのは難しいだろう。
そんな中でも、このコネクトエリア浜松のようなシンプルだが効果のある取組みを進めたり、物流企業がこのような仕組みを積極的に活用することで、2024年度問題を含む直面する課題を少しずつでも打開していくことは、これから先の物流業界において非常に大切なことのような気がしている。