物流・在庫管理の川上から川下まで

自分の業務経験を通して、物流・在庫管理について学んだことや物流関連のニュースなどで気づいたことを記していくブログです

食材在庫管理の特有の課題

「在庫管理」というと、基本的に数量の管理の問題だと思われがちで、食材の在庫管理においては、そこに賞味期限管理という問題が絡んでくる。

在庫というのは商売をする上で必要な資産のことであり、これがなくては商売が成り立たない。すなわち、在庫が切れてしまうと売りたくても売るものがないということになるので、大前提として在庫がなくなってしまうということは許されない。だから、在庫管理はまずは「在庫がなくなってしまうことを避ける」ことが最優先の目的となる。

基本的な考え方として、当日売りたい量の予測というものがあって、その量をある程度上回る数を確保するのが在庫管理の目的である。売りたい量というのはあくまで予測であって、予測が外れてそれ以上に売れてしまうこともあり得るため、通常は予測販売量よりも多少なりとも多い量を確保することになる。特に物販の商売における在庫管理では、欠品を防ぐためにある程度余裕のある在庫を確保するのが通常である。一方で、売り切れを避けるために多めに在庫を持ちすぎると、予測よりも実績の販売数が少なかった時には、在庫が多く残ってしまい、いわゆる過剰在庫の状態になる。過剰在庫の状態になると、倉庫や店舗のスペースが有効活用できなかったり、他の売れ筋の商品を仕入れるスペースがなくなってしまうなど、様々な課題につながる。ただし、賞味期限や消費期限がない製品であって、いずれは売れるものであれば、一時的には問題になるが、発注のペースを見直すことで中長期的には課題を解消させることができる(いつまでたっても売れない製品の過剰在庫は大問題だが、それは別の問題である)。

一方で、食材の場合にはごく一部の例外を除いて、消費期限や賞味期限が設定されている。この期限を過ぎたものは当然ながら販売したり飲食店舗での調理に使うことはできない。かつてはこのような期限管理が非常にルーズに行われていた時代もあったのかもしれないが、食の安全について厳しい管理が求められている現代においては、期限切れの食材を使用したり販売したりすることはまず考えられない。そのようなルーズな対応が明るみに出れば、その企業は世間からの信用を失い大きな代償を払うことになる。

つまり、食材の在庫は設定されている期限内に確実に使い切れる在庫量以下にコントロールしないと、せっかく購入した在庫を使いきれずに廃棄する羽目になり、大きな損失につながる。売るものがなくならないように十分な在庫を確保しつつ、期限切れの廃棄が発生しないように過剰在庫も避ける。このちょうどいいバランスを保つために、食材の発注・在庫管理では非常に繊細なコントロールを求められる。この繊細なコントロールを実現するためには、以下の3つのポイントが重要になる。

①精度の高い販売予測
②確実な棚卸=在庫数量の把握
先入れ先出しの徹底

次回、この3つのポイントについて、自分の経験を交えてもう少し詳しく書いてみたいと思う。