物流・在庫管理の川上から川下まで

自分の業務経験を通して、物流・在庫管理について学んだことや物流関連のニュースなどで気づいたことを記していくブログです

【コラム】物流と人手不足の課題

■日本の人手不足問題はまだ入り口
昨日の日経新聞の社説で人手不足についての記事が出ていて、今は社会機能を守るための大変革の時との記載があった。2020年時点で7509万人だった15~64歳の生産年齢人口は、2040年には6213万人まで減ってしまうとのことだ。率にして20%近くも減少することになる。
今の時点ですでに日本は十分すぎるほどの人手不足に陥っているが、ここからさらに20%近くも生産年齢人口が減ってしまい、それがわずか十数年後にほぼ確実に実現してしまう未来ということである。社説の中で「足りない人手をロボットやAIで補う発想ではなく、テクノロジーで処理できない仕事だけを人が担う考えに転換しなければならない」とあったが、まさしくそのとおりであり、根本的な発想の転換が求められているのが今の日本の現状だと思う。

■人手不足と宅配事業
物流業界にとっても、当然これは避けては通れない課題である。今日はBtoBの物流ではなく、BtoCの宅配事業に絞って文章を書こうと思うが、コロナ禍の影響もあって宅配の需要は大幅に伸びていて、宅配の企業はその需要に応えるべく苦心しながらも宅配事業を何とか維持してくれているものの、従来と同じ枠組みでやっていたら、遅かれ早かれ限界点に達することだろう。
おそらく配送の仕事は、前段で書いた「テクノロジーで処理できない仕事」に属する部類の業務だと考えられる。ドローンによる配送の研究もされているが、日本の住宅事情を考えると実現できたとしても限定的な配送に限られてしまい、大部分の配送は人手による物流に頼らざるを得ない状態が続くだろう。もっとも、部分的にでもドローン配送などのテクノロジーでカバーできるところはカバーして、人手の配送の量を減らしていくことはとても大切なことではあるが。

■ラストワンマイルは宅配企業側だけの課題なのか?
もともとは通信業界で使われていた言葉で、今はほぼ物流用語として使われている言葉として「ラストワンマイル」という言葉がある。「物品が物流の最終拠点からエンドユーザーに届くまでの区間」を意味する言葉であり、まさしく物流の人手不足問題における最大のポイントとも言える。
このラストワンマイルを担う人材の確保がどんどん厳しくなる中では、遅かれ早かれ宅配サービスの品質は徐々に低下していくことは避けられないであろう。宅配を担う側の企業努力だけではもはやどうにもならない課題だと思う。現実に郵便のサービスは土日の配達がなくなるなど、顧客の我々がサービス品質の低下を受け入れざるを得ない状況がすでに発生している。
日本の人手不足の現状を考えた時に、顧客側もいつまでも「お客様は神様です」的な感覚でいてはいけないと個人的には感じる。サービス品質が落ちるのは嫌だけど高い代金も払いたくないという感覚ではもはややっていけない。現状や背景を考えてある程度のサービスの緩和を受け入れたり、宅配に関して言えば顧客側がロッカー受取りサービスをより積極的に活用するなど、サービスの提供側と受け手側が一体となって人手不足の課題に立ち向かっていく必要があると思われる。